労働力のカンバン方式

派遣労働者の相談が主だ。
フリーターやアルバイトで一時的に働いていた人々が、
比較的簡単に、ある程度の金額を稼げるとして、
派遣労働者として働いていた。
主な働き口は、自動車産業
それは、カンバン方式の最終章だったようだ。

こうした正社員から派遣社員への切り替えも、もとを言えば、
バブルがはじけてコスト高に悩むようになった
日本の代表的なメーカーの
やむにやまれぬコスト・ダウンの知恵から生まれたものです。
その代表格は何と言ってもトヨタ自動車でしょう。
トヨタカンバン方式とは
欲しい時に欲しい物を手に入れて在庫を持たないことだから、
それを人間に応用すれば、
「労働力のカンバン方式」ということになります。
 → 他人より先ず自分の失業問題の解決から

少々ショッキングな記事だった。
それでも、やっぱりそうかと納得した。
合理性、経済性を突き詰めたカンバン方式
世界中から絶賛された方式が、綻(ほころ)び始めている。
大企業の一人勝ち的な生産方式。
賞賛を受ける企業で働いていた派遣社員からは、
「○○○の車は、絶対買わない」
という言葉を、何度となく聞いた。
それほどひどいとは思えなかった。


数兆円の利益を上げていた日本を代表する企業が、
いまやバッシングの対象として、
理不尽なまでの非難を受けている。
単に一企業の問題ではない。
日本の代表的な大企業は、
ほとんど例外なく派遣社員を雇い、
不要となったいま、使い捨てている。
昨日も、太陽電池を作っている企業が、
工場停止により、派遣社員を待機あるいは解雇するとの情報。


派遣労働者の次の仕事が見えない。
カンバン方式として、使い捨てられた人々は、
どこへ行けば良いのだろう。
工場は海外へ出て行ける。
しかし、そこで働いていた人々は、
海外へは行けない。
やはり、畑を耕す生活に戻るべきなのだろうか?

すると、日本の失業率がふえることはあっても
俄かに恢復することは全く考えられず、
派遣社員の解雇は今後も更に続き、
失業は日本の最も強烈な
社会問題になる覚悟をしなければなりません。
それでも日本には過去の蓄積があり、
所得水準も高いので、
アフリカで起るようなことにはなりませんが、
かつて昭和の初め頃に経験したような
「大学は出たけれど」
「詩をつくるより田をつくれ」に似た社会現象が
一世を風靡することは避けられそうもありません。
難しい世の中を生きる覚悟が必要になったのです。
 → 失業の日本は長期化する覚悟が必要



→ 複雑化という“魔物”に苦しむ(10.02.15)