ともに担う

国が出す方針、施策。
その対象がわからない場面に出くわす。
何を目的に、誰を対象にセーフティーネットを構築するのか。

生活保護受給者の急増
それを防ぐための第二のセーフティネット
うたい文句は素晴らしいのだが、
それでも網の穴から漏れていく人々が。


反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さんが発表された内容の一部だ。

 しかし、こうした官民の相互不信は、結局誰も幸せにしないのではないかと思います。官僚の人たちは制度・政策のプロ(職人)です。しかし、さまざまな立場の当事者の生活実態やその人たちの気持ちについては、まったくの素人です。他方、私たち現場の人間は、それぞれが携わっている分野での職人ですが、制度設計や政策の整合性を図る技術面ではド素人です。だとしたら、両者が同じテーブルを囲みながら相互の長所を生かし、より良いものを作るために建設的な共同作業を展開したほうが、より多くの人たちにとって幸福な結果をもたらすことができるのではないでしょうか。
→ 内閣府参与辞職にともなう経緯説明と意見表明、今後

現場で相談者とお話ししていて、同様の場面に出くわす。
昨年来、次々と出てくる失業者支援策。
そのどれも、パンフレットや広報を見る限り、
立派で、申し分のないような内容に見える。
だが、相談者を前に聞く言葉は、
その書かれている内容とは裏腹に、
対象者でないとか、
条件が足りないとかで、
なかなか支援のネットに掛からない。


何かが足りない。
それは、湯浅さんが書かれた内容に凝縮されている。
失業したことがない人が、
終身雇用により、定年まで保証された人々が、
どれだけ派遣労働者の気持ちや状況がわかるのだろう。
職安にくるのに、交通費がないという失業者の気持ちが、
その状況が、どれほど理解できるのだろうか。


最近多いのは、都会で派遣労働者として働き、
その後解雇され、失業保険の給付も切れ、
就職ができないまま、実家に戻った人たち。
年齢は30歳前後で、立派な大人だ。
こうした人々が支援を申し出ても、
行政は世帯主ではないので、支援はできないと門前払い。


失業保険は個人を対象に給付される。
それに対し、生活保護をはじめとする給付金や貸付金は世帯が対象。
個人で就職活動する若者が、
実家に戻ると、世帯主のもとで扶養家族と見なされ、
支援の対象から消えてしまう。
こうした現実が多発している。


行政に頼らず、都会で踏ん張り就活しても勤め先が見つからず、
やむなく実家へ戻り、肩身の狭い暮らしに甘んじる。
家族からは、仕事を見つけて出て行くよう急かされ、
職安に来るにも、企業の面接に行くにも、
その費用さえ貸してもらえない。
そういう若者の声を聴くたびに、
行政の施策の矛盾を感じる。
市役所と社会福祉協議会と職安を、
ピンポン球のように行ったり来たり。


批判ではない。
目の前にいる相談者を支援したいというだけだ。
助けて欲しいと叫ぶ若者を、
なんとか次のステップまで導きたい。
そうした思いで若者と向き合っている。
現政権の「民主」というひと文字に期待している。
民を主体とする施策が実施されることを...。


<パンフレット>
 → 新しいセーフティネット支援ガイド
 → 住宅手当緊急特別措置事業の創設
 → 緊急人材育成・就職支援基金