尊厳について

ひとは生まれながらにして平等であると学んだ。
このひとも、
そのひとも、
あのひとも、
どのひとも、
みな、同じく生きる権利を持ったひとだ。



自分に、はたしてそういう意識があるのだろうか。
仕事柄、多くの失意にあるひとと向き合う。
ともすれば、自分の立ち位置を見失う。


あの大震災から3ヶ月。
テレビに映し出される多くのひとびと。
いまだに進まない、瓦礫の山の撤去。
なすすべもなく、ひたすら救いの手を待つ
多くの被災者。


ひとの気持ちはわからない。
何を考えていようと、そのこころは見えない。
同じことばを口にしても、その意図はなかなか計りがたい。


リーダー不在。
責任をもって、事をなすひとの不在。
誰もが立ち往生しているときに、
道を示し、自ら先頭になって歩み出す。
地位も、名誉も、あらゆるものを捨て去り、
ひたすらその道を探し、前へ進む。


リーダーとフォロワー。
政治の世界では、そのあり方で足の引っ張り合いが。
毎年変わるリーダーに、諦めムードがただよう。
だれがやっても同じだろうと。



雑草という植物はない。
どれもが、生命を持ち輝いている。
道ばたに咲いている草花のひとつひとつが、
誰に見られるでもなく、生きている。
意識をそこに向けるだけで、
美しい、可憐な微笑みがある。


ひとは大切なものを見失っていると知らされた。
雨も、風も、太陽も、
それぞれが時と所を変えながら、在る。
大雨も、大風も、灼熱の陽射しも、
すべてが必然。


熱くても、寒くても、
湿気っても、カラッとしても、
どれもが、在りだ。
ただ、受け入れればいい。


山川草木のいとなみ。
四季の移ろい。
それぞれを、あるがままに受け入れる。
雨が降れば、ありがとう。
風が吹けば、ありがとう。
目の前に起こるすべてのものに、
必然を感じるこころ。
その気持ちこそが、生きることだろう。



好きとか嫌いとかではなく、
ただ、いま起きている事象を、
そのまま受け入れる。
そして、動く。
あらゆることに、その意味を考えながら。


こうした考えが浮かんでは消える。
そして、尊厳ということばだけが残った。
リスペクト。
敬(うやま)うこと。
大切に思うこと。
ありがたく思うこと。
いまの自分に必要なこころの有り様と思った。