台湾

15年ぶりくらいになる。
この文章は、台湾のアパートで書いている。
雨音がときどき聞こえてくる。
アパートは、台北の郊外に位置し、
MRTという地下鉄の駅までは、バスで10分弱。

運賃は15元(約40円)。
朝5時から、夜の12時まで運行しているらしい。


近代化された台北市街と異なり、
古い台湾の街並が、雑然と続く。
駅からは歩いても、20分ほどの距離。
緩やかな坂道を、ゆっくりと歩いた。

30年ほど前、中国語を学ぶために滞在、
1年弱だったが、台湾が大きく飛躍する直前の時だった。


その後、ときどき訪れていたが、
その変貌に、魅力がだんだん失せていくのを感じていた。
古い時代の生活を捨てて、近代化されていく姿。
それは、人が化粧する姿と重なる。
美しさを求めて、ひたすら努力するのだが、
度を過ぎると、個性をなくし、
無機質の、魅力がない存在になるように。


今回は、特別な理由があって来たわけではない。
なんとなく、有給休暇の取得で思いついた。
それほど期待もなく、飛行機に乗り、
半日かけて今の場所に着いた。
毎日霧雨で、太陽の光は望めない。
それでも、こうした旧市街のような場所に住むことができ、
来て良かったと、感じている。


生命力であふれる市場。

無秩序に、自分勝手に動く自動車やバイク。
でたらめに配置された看板群。
凸凹や、段差が散在する歩道。
日頃目にしない光景に、忘れかけていた立ち位置を思い出す。
人間とは、生きるとは、国とは、などなど...。


人は、みな同じという考え方。
逆に、人は、みな異なるという考え方。
どちらも正解だ。
見方を変えることで、
見えなかったものが、見えてくる。
そうすることで、
これまで自分が考えていたことが、
まったく否定され、逆の結論に達することも。


自分の常識が破壊される瞬間だ。
固定概念が、打ち砕かれ、
障壁が爆破された後に拡がる、新たな世界。
その先に、絶望を超えたあらたな希望が見えてくる。


ひとは、生き方を選択することで存在する。
どういう生き方を選ぶかが、
どういう自分であろうとするかの選択に重なる。
あらたな自分に生まれ変わるには、
今の自分の殻を破る勇気が必要だ。



いまの日本に必要なのは、
「自分の殻破り」宣言かもしれない。
これまでの考え方、生き方を見直し、
自分の殻を認識しつつ、
新たなる自分の創造に向けて、
古い殻を脱ぎ捨てる決意。


奇しくも、明日は震災から一周年になる。
帰国時間が、津波発生の時刻と重なる。
あの時誓った気持ちを、再度思い出しながら、
次のステップを踏み出すことにしよう。



写真のリンク(FB):
 →市場など市場その2
 →中国茶茶葉料理
 →木の実細工伝統芸術
 →街並総督府