デジタル教科書

やはり、これも彼が遺したものだった。
すべての人が、生まれや素性に関係なく、
等しく情報を共有できるために。
その環境整備の流れが、
さらに加速し、大きなうねりとなっている。



教育革命と称される。
携帯電話を作り替えた彼が、
教科書も作り替えようと挑んだ。
こころざし半ばにして、旅立ち、
その意思を受け継いだ同志によって、
先日、その革命の狼煙(のろし)が上がった。


思えば、30数年前、
外国の人へ日本語を教えていた。
英語圏、それから中国語圏の人たちが主だった。
まともな教科書が存在しないなか、
なんとか使える教材を自作。


そんなとき出会ったのが、コンピューターだった。
この機械を使えば、
教えたい内容をまとめて、
学ぶ人へ提供できるかもしれない。
わたしの、コンピューター業界入りの原点だ。


そのときから、ことあるごとに教科書制作にこだわってきた。
「教材」という言葉はあまり好きではない。
「学び材」という表現が適切だと思っている。
「教材」は、教えるための材料であり、
それは教える側=教師にとって、都合の良いものだ。
対して、「学び材」とは、学ぶ人のためのものだと考えている。
学びの主体は、学ぶ人であり、
決して、教える人ではない。


学ぶ人が、楽しく、楽(ラク)に学べる仕掛け。
そういう「学び材」の制作を考えてきた。
専門学校でも、時間の多くは、
「学び材」の制作に消えていた。
なんとか、学びやすいテキストを作りたい。
そういう思いで、過ごしてきたことを昨日のように思い出した。


ついに、自分が求めていたソフトが登場!
直感的に思った。
これまで漠然と、なにするでもなくコンピューターと向き合っていたが、
ようやく、自分の中の潜在的な想いが見えてきた。


あの時、英語を学び、中国語を学んでいた。
その後、日本語を教えるようになり、
それらのテキスト制作に役立つと思い、
CAI(コンピュータ支援教育)のための教材制作会社に就職。
その後、パソコン教室などを経て、
専門学校へ奉職。
そして、いまキャリア教育の最前線に立っている。


彼の置き土産の一つが、
ようやく、自分の人生と同期し始めている。
彼の遺志を引き継ぐべく、
整えられつつある、教育革命へ、
馳せ参じること。
それが、デジタル教科書発表から受け取った、
彼からのメッセージだ。
深く、強く、受け止めて、進みたい。



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