温故知新

週の初めに、ようやく動き出した。
後世への最大の遺物」と、
貧しき信徒」、
そして「茶の本」を購入した。

購入といっても、価格は無料。
いづれも、若かりしとき、読んでいた本。


青空文庫などで、データーそのものは公開されている。
これまでも、何冊かダウンロードし、読んだことはあった。
著作権が切れた書籍を、
ボランティアの方々が、デジタル化し、登録している。
地道な仕事に、頭が下がる。


この動きは、ずっと以前から知っていた。
もともと、読書好きではない。
高校の頃まで、まともな本は読んだ記憶が少ない。
「ミュージックライフ」という音楽雑誌が、
唯一の愛読書だった。
いまでもそうだが、小説が読めない。
登場人物など、覚えきれず、
話の展開を、時間かけて追っていくのは苦手だ。


本を読むきっかっけは、20代前半のアメリカ滞在にある。
生意気に、生きていたころだ。
まずは英語をと、必死で話せるよう努力した。
日常会話に困らなくなったころ気がついたのが、
自分自身の中身のなさ、だった。
英語は一応話せても、話す内容がないことに、
愕然とした。


ニューヨーク図書館にあった日本語図書コーナーで、
貪(むさぼ)るように、本を読み出した。
帰国してからは、自分自身のアイデンティティーに興味を持ち、
日本人論や、日本の伝統的な考え方、生き方を中心に、
講演会、学習会も含めて、学ぶ日々が続いた。


その中で、関心を持った多くが、
欧米と日本を比較しながら、
日本あるいは東洋の考えを発信した人びとだ。
内村鑑三新渡戸稲造
岡倉天心鈴木大拙などなど。
かって欧米に学び、ある意味失望し、
東洋の良さを、アピールしてきた人びとだ。


話を戻すと、こうした方々の書物は、
文庫本などで発売はされているのだが、
いまさら購入して読もうと考えたことはなかった。
青空文庫などでも同様で、
ダウンロードしてまで読む気にはならなかった。
それが、今回 iBookstore で取り扱いが始まり、
最初に購入となったわけだ。


正直、嬉しかった。
ヤッター、やっと自分が望む環境で、
書籍が読めるのだ。
こうした感想が、喜びにつながったのだと思う。
なにが違うのか。
そう、使ったことがない人に、この気持ちを伝えることは、
とても難しいと感じる。


林檎社の製品は、往々にしてこうした傾向がある。
体験しないとわからない心地よさというか、
満足感といえばいいのか。
こうしたもどかしさは、
奇しくも、いま読んでいるを通して理解できた。
林檎社が提供しているのは、
単なる製品だけではなく、
それを通した体験(エクスペリエンス)なのだと、記している。


なるほど、そうか。
自分がこれまで林檎社の製品を使い続けているのは、
こうした経験を、
ユーザーに提供し続けてきた努力の賜物なのかと。
改めて納得したしだいだ。


巷では、ジョブズ氏を失ってからの先行きを不安視する報道も多いが、
林檎社が、こうした方針を変更しない限り、
これからも、ワクワク、ドキドキする製品を世に問い、
そうした製品から得られる至福の時を体験できるわけで、
こうしたユーザーとメーカーの信頼関係が続く限り、
まったく問題ないだろう。


ながながと書いたが、言いたいことは、
iBookstore は素晴らしい。
その素晴らしさを、皆さんも体験してみてはいかが、
ということだ。
まだの方は、ぜひ。